「Winny」を開発したことで著作権侵害のほう助罪に問われた「47氏」=金子氏だが、控訴審で無罪判決が出ましたね。
・「この5年間は裁判に勝つことが自分の仕事だった」(INTERNET Watch)
・「Winny」開発者・金子勇氏、逆転無罪、大阪高裁で控訴審判決(INTERNET Watch)
今までの「あらまし」を忘れてる方も多いと思うが、数日前に日経BPに記事が載っていて、なかなか分かりやすい「まとめ」だなぁと思ったのがコレ。
・Winny裁判の控訴審が判決へ(日経BPネット)
作者が無罪なのか有罪なのか、個々人で思うところはあるだろうが、しかし日経の記事で佐々木さんが書いている通り、地裁判決は「プログラム自体は価値中立である」と認めつつ、一方で罰金刑を言い渡すという、なんともワケの分からない、良い言い方をすると「ケンカ両成敗」、悪く言うなら「玉虫色」の判決だっただけに、今回の控訴審判決はスッキリしていて分かりやすいし、妥当だと思う。
...なんて書き方をして、自分の主張を隠すのは良いことじゃないと思うので書くが、私は「47氏」自身は無罪だと思っています。
道義的にはともかく、法的には。
ただ一方で「有罪だと言われるなら、それはそれで仕方のないこと」だとは思っていた。しかし地裁判決はなんとも言えない中途半端なモノで「どっちだよ」というかんじだったので、今回の判決内容は評価できる。
これは「無罪だから評価」するのではなく、「判決の内容が一貫していることに対して」評価できる、という意味です。
「お前は無罪だよ」と言いながら、一方で「でもお前罰金ね」というのは、意味不明ですからね...。
判決までの概要については日経の記事でコト足りると思うのだが、細かい経緯についてはINTERNET Watchの記事を漁ると把握できると思うので、ここでは書かないことにする。
今後はこの無罪判決が確定するかどうか(検察側が上告するか、また上告した場合、最高裁がどう判断するか)がとりあえずの問題だが、やはり「その先」は「改良版Winny」の問題だろう。
INTERNET Watchの記事(『この5年間は~』のほう)にある通り、とりあえずバグフィックス版は提供されると思うが、「その後」はどうなるのか。
逮捕される以前のネットのビジネス環境と異なり、この数年でコンテンツの有料販売は一般化した。そして、「47氏」は一度逮捕されてしまった。
そうすると、緊急性のあるバグフィックス版の提供は許容されるとしても、「その後」が問題になる。
「その後」については絶対に「著作物の流出対策をどうにかしろ」という圧力が掛かるだろうし、一度逮捕され、かつここまで裁判がこじれた以上、47氏はそれを飲むか、開発終了を宣言して撤退するかを選ぶことになるだろう。
さてどうするのだろうか。
「次期版」はバグフィックス版だと言い張ることが可能だとしても、やはり「次々期版」となると海賊対策の機能を盛り込まないと、次こそ絶対に有罪になるはずだ。
YouTubeがサービスの途中で「合法路線」に舵を切って生き残りを図ったように(例えタテマエであっても『法に従い、著作者からの申告があれば削除しますよ』と言って事業を継続しているように)、「海賊行為」対策をしつつも開発を継続するのだろうか。
開発を継続すれば再び民事・刑事の法的な問題が巻き起こるだろう。
私は今、無罪を喜びつつも『無罪が確定した後』のことが非常に気になっています。