「Winny」事件の裁判。
判決が出たわけですが、なんかよくわからん判決ですね。
・「Winny」開発者の金子勇氏に罰金150万円の有罪判決(INTERNET Watch)
・「Winny」開発者の金子勇氏が会見、本日中に控訴へ(INTERNET Watch)
・「徹底抗戦する」――Winny開発者、控訴へ(ITmedia)
・Winny開発者に有罪判決--150万円の罰金命令(CNET Japan)
テレビの速報で見た段階では、罰金刑と報道されてたので「うーむ、そうなったか」と思っていたのだが、ネット記事で詳報を見るにつけ、どうも疑問符が…。
検察側の主張を全部飲み込んでないのは評価できるのだが、もう一歩踏み込みが足りず「逃げた」印象。
上記の記事と判決要旨を読むとわかるのだけど。
・ウィニー有罪：京都地裁の判決要旨(MSN毎日)
警察・検察が繰り返し強調してきた「著作権侵害の意図」については「著作権侵害が蔓延することを積極的に企図していたとまでは認められない」として、47氏（金子氏）側の主張を認めてる。
この裁判はそもそも「47氏が著作権侵害を蔓延させようとしてソフト開発したんだから幇助になるだろゴラ」という論法で始まったんだから、「積極的な意図はナシ」という時点でもう無罪の選択しかないはずだろうに、結果責任が持ち出されて（『Ａらの行為で生じた結果に対する寄与の程度も決して少なくない』）、最終的な結論としては罰金刑（求刑は1年間の懲役刑）となった。
うーーむ？
いや、有罪なら有罪、でもいいと思うんですよ、それは。
納得できるかどうかは別として、仕方ない。
「Winny開発自体が悪であり有罪なのだ。お前は積極的に著作権侵害を主導（積極的な幇助）したのだ。だから求刑通り懲役刑ね」というなら、それはそれで仕方ない。
ちっ、と思うだけです。
しかし「積極的な意図はない」と認めながら、一方で「皆が容易に侵害できるようなソフトを無差別配布したんだから、懲役刑はやめとくけど罰金刑にしとくわ」という、中途半端な判決という印象を受けるわけです。
だから「逃げたな」というのが私の感想。
「1年の懲役刑」という求刑に対して150万円の罰金で、しかも「積極性はなかった」と認められたんだから、普通なら被告側も受け入れられるんだろうけど、今まで全面無罪を主張してきたし、大体にして「皆の販売行為を容易にしちゃったんだから有罪ね」という主旨だと控訴せざるを得ないだろうな。
有罪と信じる人にとっても、無罪だと信じる人にとっても疑問符のつく判決内容かなと。
まぁおいおい、各メディアに解説記事が出るだろうから、それ待ちかなー。
うーん？？
12月14日追記
・Winny開発者の有罪判決で「今後はWinnyユーザーの摘発も予想」(INTERNET Watch)
各種コメント。
・Winny裁判、罰金刑は重いか？軽いか？--自己矛盾を抱えた判決(CNET Japan)
・横山哲也の100年Windows : 「Winny裁判」京都地裁判決に思う(ITpro/日経BP)
・小飼弾 404 Title Not Found : 表現としてのソフトウェア(ITpro/日経BP)
で、この三つは目についた論評。
私の感想は、CNETの記事(佐々木俊尚さんの意見)とほぼ一緒ですね。
横山哲也さんのコラムにも同意。これは弁護団の「高速道路理論」と一緒で。誰か米国政府を訴えたらどうかしらん。
小飼弾さんのコラムに関しては微妙なところ。まぁ確かに思想信条の自由（表現の自由）をもっと前面に出す手もあったろうけど、そこは二者択一だろうし結果論かなと。
ただ今回、結果論で有罪扱いになってしまったので、控訴審でその点を少し打ち出すのはアリかも。
つまりアイディアを具現化しただけで、それが有罪になるのか（『表現の自由』）、という問い。
弁護団は控訴審でも真正面からいくんだろうか？
12月18日追記
・Winny事件判決の問題点 開発者が負う「責任」とは(ITmedia)
ようやく出た、法的な「解説」記事です。
12月19日追記
・Winny裁判を考える なぜ「幇助」が認められたか(ITmedia)
二日連続、法的な解説記事。ITmdia、やるな。
新規に記事を起こすならば『FLMASK裁判・被告弁護人が解説するWinny裁判』ってとこでしょうか。
昨日の記事（『Winny事件判決の問題点 開発者が負う「責任」とは』）とあわせて読むとイイカンジです。
