本の紹介:『げんしけん』(木尾士目)


最終更新日:2010-02-14
arrowタイトル:げんしけん
arrow作者名:木尾士目
arrow掲載誌:アフターヌーン(講談社)
Walkerplus.com book interview:木尾士目(元がリンク切れになっているのでInternet Archiveです)
第一巻発売当時のインタビュー記事。「げんしけん」は実在した?

 『五年生』の後、一年ほどして連載開始された作品。アニメ化もされたので木尾さんの「代表作」になるのでしょう。
 第1巻のオビには「サークル部室から広がる楽しい大学生活を等身大で描く、アキバ系青春物語」とあります。
『陽炎日記』から前作『五年生』まで続いていた作風の面影は無くなっています。

 "オタク"の自覚がないオタク、笹原が大学に入学し「その手の」サークルである"げんしけん"に入るところから話が始まり、同学年の濃いオタク(けど外見はカッコイイ)高坂と、彼との関係で何故か部室に入り浸る一般人・春日部咲。一応、笹原が主役になるのだけど、咲の一般人からオタクへの「転落劇」も絡んで話が進んでいきます。
 咲は始めは高坂を一般人に「厚生」させるべく、サークルから退部させようさせようとするものの、自分のほうが少しずつ少しずつ侵食され遂には入部したりコスプレするハメになり(但し、本人の意思とは無関係に結果として)、毛嫌いしてた他のオタク連中とも打ち解けていく咲。笹原は、入部したことで自分に足りないのは「オタクになる覚悟」だと気付き、立派なオタクへと成長していく。
 この二人を中心にしつつ、他のメンハーの生活モクロスオーバーして「ヲタの大学生活」が描かれていきます。

 大体、一話=一ヶ月くらいのペースで話は進行し、毎日を追いかけるというより、「生活を垣間見る」カタチになります。
 して。笹原に対する仕打ち(?)は、読者に向けられたものに感じます。連載されている『アフターヌーン』という雑誌は、オタ率が高い雑誌ですが、中には「俺はマンガが好きだし、ゲームも好きだ。アニメも見る。でもオタクじゃないもんね」という人もいるわけです。
 そういう人に向かって「いや、お前は正真正銘のオタクだ。一般人じゃないんだ。自覚しろ」と。そういうことなんじゃないかなぁと。私は何回か読み直していてそう思いました。

 しかし同じ作者の描く「大学生活」の筈なのに、こんなに違うのはなんででしょう。『四年生』『五年生』が「暗」の部分を描いてたのに対して、『げんしけん』は「明」。楽しいところがメインに描かれています。まぁ、随所に「イタイ」部分はあるんですけどね(咲と高坂の関係がイタイ)。絵柄も微妙に変わってるので、第1巻が発売された当時、何回も「これホントに木尾さんだよな」と確認してしまいました。改めて見ると、一巻と、最新の五巻の間でもかなり変化があります(まぁ月刊連載なんだから当然か?)。

 色々と「うーん?」という個所があるものの、『げんしけん』に関しては前作まであったような「あとがき」が一切出てこないので(カバー裏は『くじアン』に占拠されてるし)、単行本派の人には謎だらけ。たぶん本誌のほうには色々と書かれていたのだろうけど…。本屋にいったら「解説ブック」なるものが出てましたが(コレにはインタビューとか設定資料とか収録されてるらしい)、アレを買うと負けな気がするので買ってないです(この辺、まだ自分をそこまでヲタと思えない私。ヲタなら迷わず買え!)。

 そういえば『五年生』で、
「とにかく本編は単品それのみで評価されるべきだ、と。一度作者の手を離れたら、もう読者のものだ、と。だから同人誌もどんなん作ってもOKだぞ、と」
 なんてことが書かれてたので、『げんしけん』についてもオッケーなのでしょう。出し放題です。

 しかし前作までで散々出てきたエロスなシーンが皆無なのが、なんとも…。今のところ、5巻に出てくる咲のシャワーシーンが一番露出度が高い?
 気になるのは、これどうやって完結すんだろうって処。笹原が大学卒業と同時に終わり、ってのは確かなのだろうけど、そもそも話の発端が発端なので、明確にこれっていう終わり方が予想不可。『四年生』なら就職、『五年生』なら卒業と就職と二人の関係というのが明確なポイントなわけですが。
 これはなぁ。なんだろう。特に事件なく過ぎて「こうしてボクの大学生活は終わった」とかいう終わり方になるのだろうか。

 『陽炎日記』のあとがきで「やりたいことと出来ることは違うのだよ」なんて書いてましたが、果たして「これ」が木尾さんの「やりたいこと」だったんですかね。次回作がどんな作風になるかで、そこが判断できそうな気がします(まだ『げんしけん』完結してないけど)。


と、ここまでが'06年ごろまでに書いたもの。
 '10年の段階ではとっくに完結し、かつ木尾さんは『げんしけん』の次『ぢごぷり』ってのを連載してます……が、これがなんと子育てマンガ。『地獄からきたプリンセス』で略して「ぢごぷり」なんだとさ。しかしこれ、どーしろと…。なんつーか迷走中?
 ちなみに先日、「完結後」を描いた読みきりが「アニメDVD-BOX発売記念」と題してアフターヌーンに掲載されていました(2010年2月号/2009年12月売り)。
 ちなみにリライトにあたってAmazonを調べたらタイトルが『げんしけん―THE SOCIETY FOR THE STUDY OF MODERN VISUAL CULTURE』ってなってます。1巻はただの『げんしけん』なんですが、2巻~9巻はこの英語つきのタイトルです。なんで?


マンガの紹介arrowよつばと! arrowよつばと!(既読者用) arrowよつばと!(既読者用2)   arrow陽炎日記 arrow四年生 arrow五年生 arrowげんしけん   arrowみなみけ   arrowイエスタデイをうたって arrow僕らの変拍子 arrow愛人[AI-REN]
小説等の紹介arrow封印作品の謎