本の紹介:『五年生』(木尾士目)


最終更新日:2010-02-14
arrowタイトル:五年生
arrow作者名:木尾士目
arrow刊行数:全5巻
arrow掲載誌:アフターヌーン(講談社)

【『五年生』を好きな人には、『五年生』『イエスタデイをうたって』もオススメ】

 『四年生』の続編になります。第1巻の裏表紙は、
「就職も決まり、後は卒業を待つだけ…。そんな平和な日々が一瞬にして崩れ去った。
『四年生』の明夫と芳乃が学生と社会人に別れ、微妙に変わってくるふたりの関係。
ライブ感覚恋愛論、新章の始まりです。」

となっています。

 「アフターヌーン」自体を読んでない私は、てっきり『四年生』が完結した後、しばらくしてから『五年生』が企画され作られたものだと思ってたんですが、改めて奥付を見ると連載開始が'98年7月号。『四年生』は-'98年5月号なので、間、一ヶ月しかあいてないんですね。

 タイトルと裏表紙の文からわかるとおり、ポカミスにより明夫は留年してしまいます。
一方、弁護士になるために司法試験に向かう芳乃は都内の弁護士事務所に就職することに。
学生と社会人。木更津(明夫の住んでるところ)と東京。立場的にも物理的にも分断された二人は遠距離(そんな遠くないが)恋愛することに。
変わる人間関係、離れる心、溜まる明夫の性欲(笑)。そんなかんじで話は進んでいきます。

 『陽炎日記』『四年生』が一冊完結だったのに大して、『五年生』は全5巻(全31話)という長さ。
連載期間は'98年7月号-'01年1月号。こんなマンガが、あのアフターヌーンに二年半も掲載されてたなんて(笑)。
おまけのあとがきマンガ「赤っ恥劇場」は二巻に掲載された「4」で終了していて、曰く、
「元々言い訳のために始めて「言い訳の必要ない納得いく本編が描けたらやめる」と思ってたんですが、「そもそも言い訳そのものが必要ない」っつーことにようやく気付きました
…だそうで。ちなみにこの後、
「とにかく本編は単品それのみで評価されるべきだ、と。一度作者の手を離れたら、もう読者のものだ、と。だから同人誌もどんなん作ってもOKだぞ、と。(見たことねーけど。そもそもこれ、そそられないよね)
ともあります。()内もですよ。私が書いたんじゃありません。

 その代わりとして、3巻の終わりには「今になってもわからないこと」。芳乃が小学生の頃の話。
4巻には「わかったところで大して意味のないこと」。芳乃が中学生の頃の話がそれぞれ収録されています。
5巻は本編の収録だけでページが埋まったようでありません。
ただカバー裏にはあとがきがあって『これが代表作にならないようがんばります』。
大丈夫、アナタの代表作はアニメにもなった『げんしけん』です。オッケーです。ヨカッタヨカッタ。

第1巻 収録作
第2巻 収録作
第3巻 収録作
第1話「幸せですか」
第2話「私はこれで大学やめました」
第3話「最後の晩餐」
第4話「影もない」
第5話「形もない」
第6話「東京夜想曲I」
おまけ「赤っ恥劇場
第7話 「東京夜想曲II」
第8話 「東京夜想曲III」
第9話 「呼び出し、待ち伏せ、立ち聞き(1)」
第10話「呼び出し、待ち伏せ、立ち聞き(2)」
第11話「客観」
第12話「主観」
おまけ「赤っ恥劇場」
第13話「たなごころ」
第14話「裸心」
第15話「裸心2」
第16話「案の定な距離感と思考停止」
第17話「separate rooms」
第18話「古き佳き時代(何時の世も同じ罠)」
おまけ「今になってもわからない事」

第3巻 収録作
第4巻 収録作
第19話「終わってる」
第20話「不定愁訴症候群」
第21話「無関係な隙間」
第22話「魔女I」
第23話「誘惑のカタチ」
第24話「交錯I」
おまけ「わかったところで大して意味の無い事
第25話「交錯II」
第26話「魔女II
第27話「魔女III」
第28話「回帰線」
第29話「プロペラ」
第30話「思い」
最終話「だめ男とさせ子」

 ところでここに貼るために改めて表紙見てみましたが、好き嫌いは別として話の流れを反映してるんですね、これ。一巻の絵が「職場」にいる芳乃と、「大学」にいる明夫。で、最後5巻では一緒になってるという。

 内容的には結構ハードで、『四年生』は所々にイタイ所がありながらものほほんと見てられるのに対して『五年生』はそうはいきません。心構えが必要です。
木更津と東京なんて遠距離じゃないじゃん、という気はするんですが、これが甘い。こういう中途半端な距離が痛いのです。東京と北海道とかいう距離なら会えないのもしょうがないと割り切れるし、浮気や心変わりも許容できそうなもんですが、中途半端に近いとそうはいかない。とはいえ、近くもないから、そう簡単にも会いに行けず、かといって「半年に一回はそっちに会いに行くから」というもんでもなく。
中途半端な距離だからこその歯痒さ、痛さがあるわけですよ。私にはこれがよくわかります。何故かというと(略)。そんなわけで、私にとってはかなり痛い作品なので、自虐モードに入らない限りは読みません。でも半年-三ヶ月に一回くらい「あー読んでみよう」と読みたくなるマンガ。
そういう古傷の全くない人にとっては、どういう評価になるのかわかりませんが。

 で、『四年生』と同じく読んでいるときに「それは俺のことかぁぁぁぁぁぁっ」という部分が出てくるのは私の被害妄想ですか…?
1巻の最後のほうに「自分が恥をかかず自己満足できるなら、自分だけ苦労するのも厭わないタイプの人間か、俺は。」てな明夫のセリフがありますが、すまん、それ俺もだ_| ̄|○ とか。
…読んでる人は大抵そう思うものなのか、私だけピンポイントなのか不安…。


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